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福岡高等裁判所 平成9年(行コ)1号 判決 2000年11月02日

主文

一  原判決を次のとおり変更する。

二  被控訴人が、平成二年二月二六日付及び同年三月一六日付をもって控訴人に対してなした各第二次納税義務の納付告知処分のうち、各納税限度額につき、金二八六〇万四〇五〇円を超える部分はいずれも取り消す。

三  控訴人のその余の請求を棄却する。

四  訴訟費用は、第一・二審を通じ、これを五分し、その一を被控訴人の、その余を控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一控訴の趣旨

一  原判決を取り消す。

二  被控訴人が、平成二年二月二六日付及び同年三月一六日付をもって控訴人に対してなした各第二次納税義務の納付告知処分はいずれもこれを取り消す。

第二事案の概要

本件は、控訴人が、第二はとタクシー株式会社(以下訴外会社という。)から、別紙物件目録記載の不動産(以下、これらを一括して「本件物件」といい、同目録一ないし三の各土地を一括して「本件土地」、同目録四・五の各建物を一括して「本件建物」、個々の土地、建物を「一土地」「四建物」などという。)を買い受けたところ、被控訴人において、右売買(以下「本件譲渡」という。)が、地方税法一一条の八所定の「著しく低い額の対価」による譲渡に該当するとして、控訴人に対し、第二次納税義務の納付告知処分をしたので、控訴人が、これを不服として、右処分の取消を求めている事案である。

一  争いのない事実

1  被控訴人は、訴外会社に対して、平成元年一〇月一九日付でなされた昭和五九年四月一日から昭和六三年三月三一日までの四事業年度に係る法人県民税及び法人事業税についての更正処分(県民税二七九万一〇〇〇円、事業税一二八二万八五〇〇円、重加算金三八八万六一〇〇円、不申告加算金九万三八〇〇円、指定納期限平成元年一一月二〇日)に基づく滞納地方税(合計一九五九万九四〇〇円)及び法定延滞金につき、控訴人に対し、平成二年二月一六日、第二次納税義務者として、四五三五万六一五〇円を限度として、右滞納金額の全額を納付すべき旨の納付告知処分(納付期限平成二年二月二八日)をし、右納付通知書は、同月一九日、控訴人に到達した。

2  被控訴人は、訴外会社に対して平成二年二月一三日付でなされた昭和六三年四月一日から平成元年三月三一日までの事業年度に係る法人県民税及び法人事業税についての更正処分(県民税六二万九二〇〇円、事業税二九五万五七〇〇円、重加算金一〇三万四二〇〇円、指定納期限平成二年三月一四日)(以下、右1の訴外会社に対する更正処分と併せて「本件前提処分」という。)に基づく滞納地方税(合計四六一万九一〇〇円)及び法定延滞金につき、控訴人に対し、平成二年三月一六日、第二次納税義務者として、四五三五万六一五〇円を限度として、右滞納金額の全額を納付すべき旨の納付告知処分(納付期限平成二年三月二七日)をし、右納付通知書は、同年三月二六日、控訴人に到達した(以下、右1の納付告知処分と併せて「本件処分」という。)。

3  控訴人は、本件処分につき、平成二年四月一日、大分県知事に対し、審査請求をしたが、同知事は、同年九月五日、これを棄却する旨の裁決をし、この裁決書謄本は、同月一二日、控訴人に送達された。

4(一)  訴外会社は、平成元年六月二八日、訴外会社所有に係る本件物件を控訴人に対し売却し(売却代金額については、後記のとおり、当事者間で争いがある。)、同年七月一〇日、その旨の所有権移転登記手続を了した。

(二)  本件物件の時価については、訴外会社が依頼した不動産鑑定士A作成の鑑定評価書(甲三、以下「A鑑定」という。)、控訴人及び訴外会社の代理人である三井嘉雄弁護士の依頼した不動産鑑定士B作成の鑑定評価書(甲四、以下「B鑑定」という。)、大分県別府県税事務所長の依頼した不動産鑑定士C作成の鑑定評価書(乙一二、以下「C鑑定」という。)及び大分税務署長の依頼した不動産鑑定士D作成の鑑定評価書(乙二六、以下「D鑑定」という。)、当審鑑定人不動産鑑定士E作成の鑑定評価書(以下「E鑑定」という。)が存在しそれぞれ本件物件の時価を五一四四万円、六一一一万九〇〇〇円、八一八一万一〇〇〇円、九〇七六万六〇〇〇円、七八九八万九〇〇〇円(平成はとタクシー株式会社の使用借権が認められる場合は六七二〇万三〇〇〇円、E鑑定についてはいずれも誤算訂正後の数値)としている。

(三)  Fは、訴外会社の株式の五〇パーセント以上を保有しており、控訴人はFの長男である。

(四)  訴外会社は、本件譲渡により、無資産となり、滞納処分を執行しても、なお、その徴収すべき金額に不足すると認められる状態にある。

二  争点

1  本件前提処分の違法性

(控訴人の主張)

大分税務署長は、訴外会社から株式会社東商(以下「東商」という。)へのタクシー営業権及び営業用自動車の譲渡、東商から訴外会社へのタクシー営業権及び営業用自動車のリースを仮装と判断して、本件前提処分のさらに前提となる処分をしている。しかし、課税庁の右判断は誤っており、本件前提処分等は違法・無効であり、これを前提とする本件処分も重大かつ明白な瑕疵がある無効な処分であるから、これを取り消すべきである。

(被控訴人の主張)

仮に、本件訴訟で本件前提処分等の違法性を争えるとしても、本件前提処分等に重大かつ明白な瑕疵はない。

2  本件物件の売買代金額

(被控訴人の主張)

本件物件の売買代金額は、本件土地建物併せて三五〇〇万円である。

本件売買代金額を五〇〇〇万円とする契約書及びこれに合わせた平成二年三月二三日の訴外会社名義の銀行口座への一五〇〇万円の現金の振込入金は、控訴人が第二次納税義務を免れ、かつ、訴外会社も本件物件の譲渡益に対する課税処分を免れるために、本件物件の売買代金額を高めに仮装した偽装工作に他ならない。

(控訴人の主張)

訴外会社は、控訴人に対し、本件土地を代金四九〇〇万円、本件建物を一〇〇万円で売り渡した。仮に、平成元年六月時点での売買代金額が三五〇〇万円であるとしても、当事者間で一旦売買契約が成立した後に、同代金額を更改することは世上稀ではなく、実際に更改金額が入金されている。

3  本件物件の本件譲渡時の時価

(被控訴人の主張)

本件物件の本件譲渡時の時価は、C鑑定の八一八一万一〇〇〇円が相当である。

平成元年当時、本件土地近辺の道路の整備が確実に予想され、一土地の面積が九五八平方メートルもあることの個別的要因を勘案すれば、一土地の最有効使用は、わざわざ潰れ地の多く発生する戸建住宅ではなく、中低層の住宅用地とするのが合理的である。

控訴人は、一土地について使用借権減価をすべきであると主張する。しかし、本件譲渡が行われた時点で、同土地には使用借権は設定されていなかったのであるから、使用借権減価をすべきでないことは明らかである。

(控訴人の主張)

本件物件の時価は、本件売買代金額程度であり、鑑定としては、A鑑定及びB鑑定が相当である。

C鑑定、D鑑定及びE鑑定は、以下の点についての考慮が不十分で妥当でない。

(一) 本件土地は面大地なので、標準画地価格から時価を算出する際は、この点を考慮して減価すべきである。

(二) 本件土地周辺地域は、平成元年当時はマンション適地として市場が形成されておらず、最有効使用は「戸建住宅の敷地」である。

(三) 本件土地は奥行が長大で、中間がくびれたひょうたん用の形状であって、採算を考えると、中・低層共同住宅の建築は困難である。

(四) 一般公道から本件土地に至る道は狭く、本件土地は実質上の袋地的土地である。

(五) 本件譲渡時の時価算定に当たって、平成四年に供用開始された「アクセス道路」や平成六年開設のインターチェンジを考慮することはできない。

(六) 本件土地の時価の評儘にあたっては、最高・最善の使用方法を想定して算出するのではなく、不合理でない限り、買主の現実の使用方法を前提として時価を評価すべきである。

(七) 本件物件につき、平成はとタクシー株式会社(以下「平成はとタクシー」という。)が使用借権を有するから、使用借権減価をすべきである。すなわち、本件土地は、もと訴外会社が使用し、同社のタクシー事業の営業所兼駐車場として使用されていた。訴外会社と控訴人とは、訴外会社がタクシー事業を廃止して、新たに控訴人が設立代表者となって設立する平成はとタクシーが本件不動産をその営業所兼駐車場として使用し、訴外会社から平成はとタクシーへのタクシー事業の譲渡譲受の認可の日をもってその事業の譲渡譲受の効力発生日とすることで合意した。平成はとタクシーの設立登記は平成元年四月四日付でなされ、同年六月二八日付で本件譲渡がなされ、同年七月四日付で右譲渡譲受の認可がなされた。本件土地は、右認可の日の前後を通じて、タクシー事業の営業所兼駐車場として現実の使用が継続されている。したがって、遅くとも、同年六月二八日には、訴外会社と平成はとタクシーとの間で(タクシー事業の譲渡譲受の認可がなされる日を使用貸借の効力発生日とする)本件不動産の使用貸借契約が、明示または黙示に成立し、同年七月四日付で認可がなされたのであるから、同日をもって本件不動産について平成はとタクシーの有する使用借権の効力が発生した。

(八) C鑑定は、簡易鑑定であり、その正確性に問題があり、また、本件土地が中低層建物の敷地として採算がとれるかについての検討がなされていない。

4  低額譲渡該当性

(被控訴人の主張)

「著しく低い額」に該当するかどうかは、当該取引価額が時価に比して、社会通念上著しく低いと認められるか否かにより判断すべきものと解するのが相当であり、そして一般に土地の時価とは、一般の自由市場において、当該土地の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる適正な価格を言うものと解すべきである。

国税徴収法基本通達三九条関係6は、注において、「値幅のある財産については、特別の事情がない限り、時価の概ね二分の一に満たない価額をもって著しく低いと判定しても差し支えない。」と規定しており、二分の一をある程度上回っても、諸般の事情に照らし、低額譲渡にあたる場合があり、本件では、控訴人が本件物件の売買代金を五〇〇〇万円であると強弁していること、平成元年は月額五〇万円、平成二年から平成五年までは月額六〇万円の賃料を平成はとタクシーから受領し、多額の利益を得ていることを勘案すると、本件譲渡価格は、時価に比し、社会通念上、著しく低い額と認めるのが相当である。

(控訴人の主張)

権力作用の謙抑性と租税法律主義による国民の予測可能性と課税の公平性確保の原則からすると、低額譲渡の認定につき、課税庁に裁量権はない。

本件では、① 控訴人側が「営業所及び駐車場」として利用することが不合理かつ違法とはいえないこと、② 収益方法による評価額は六〇〇〇万円を上回ることはないこと、③ 本件売買代金は「路線価」や「公示価」とほぼ同額であること等の特別な事情からすると、本件売買代金額は「著しく低額」ということはできない。

また、本件物件の時価評価にあたって、平成はとタクシーの使用借権を考慮すれば、本件不動産の売買代金額が三五〇〇万円だったとしても、右売買代金額は、右通達の定める「著しく低い額」の判断基準である時価の二分の一を超えている。

5  課税手続の違法性

(控訴人の主張)

本件においては、① 控訴人に対する事実確認を怠り、② 課税の前提である本件物件の時価の判定について、慎重な判断を怠り、③ 本件処分の告知書自体を控訴人の住所宛に送達しておらず、被控訴人の本件手続は極めて杜撰であり、憲法三一条に違反し、無効である。

(被控訴人の主張)

地方税法には、控訴人に対する事情聴取をすべきとする規定はないし、被控訴人が控訴人に対し納付告知処分をし、右納付通知書が控訴人に到達したことは争いのない事実である。

第三争点に対する判断

一  本件前提処分の違法性について(争点1)

控訴人は、本件前提処分ないしさらにその前提となる処分は違法・無効であるから、これを前提とする本件処分も重大かつ明白な瑕疵がある無効な処分であるから、これを取り消すべきであると主張する。

しかし、控訴人が重大かつ明白な瑕疵と主張する事由は、本件前提処分において、所得誤認の瑕疵が存するというにすぎず、そもそも本件前提処分の違法・無効事由には該当しない。そして、第二次納税義務は、主たる納税義務が申告又は決定もしくは更正等(以下「主たる課税処分等」という。)により具体的に確定したことを前提として、その確定した税額につき本来の納税義務者の財産に対して滞納処分を執行してもなお徴収すべき額に不足すると認められる場合に、租税徴収の確保を図るため、本来の納税義務者と同一の納税上の責任を負わせても公平を失しないような特別の関係にある第三者に対して補充的に課される義務であって、その納付告知は、形式的には独立の課税処分ではあるけれども、実質的には、右第三者を本来の納税義務者に準ずるものとみてこれに主たる納税義務についての履行責任を負わせるものにほかならず、この意味において、第二次納税義務の納付告知は、主たる納税義務の徴収手続上の一処分としての性格を有し、右納付告知を受けた第二次納税義務者は、あたかも主たる納税義務について徴収処分を受けた本来の納税義務者と同様の立場に立つに至るものというべきであるから、主たる課税処分等が不存在又は無効でない限り、主たる納税義務の確定手続における所得誤認等の瑕疵は第二次納税義務の納付告知の効力に影響を及ぼすものではなく、第二次納税義務者は、右納付告知の取消訴訟において、確定した主たる納税義務の存否又は数額を争うことはできないと解するのが相当である。したがって、控訴人の右主張は採用できない。

二  本件物件の売買代金額について(争点2)

1  証拠(甲二の1・2、五六、乙六の1ないし3、七の1・2、八ないし一〇、二一の1・2、原審証人G)及び弁論の全趣旨を総合すれば、以下の事実が認められる。

(一) 訴外会社は、本件物件を所有し、事業用自動車二八台を使用して一般旅客自動車運送事業を経営していたが、平成元年三月一四日、運送事業に関する権利義務、事業用自動車、機械器具、その他の什器備品(土地建物以外の全財産)を平成はとタクシーに譲渡する旨の契約を締結し、同年七月四日、右譲渡について九州運輸局長の認可を受けた。

(二) 訴外会社は、平成元年六月二八日、本件物件を控訴人に売り渡し、同日、控訴人から手付金として三〇〇万円を受領した。そして、同年七月一〇日、同物件について、訴外会社から控訴人への所有権移転登記がされ、訴外会社は、同月一七日、控訴人から右売買残代金として三二〇〇万円を受領した。

(三) 訴外会社は、大分税務署長から、国税の納付について再三督促されたが、これに応じなかった。大分税務署管理徴収第二部門の上席国税徴収官Hは、同年八月一七日、税理士とともに大分税務署に来署した訴外会社の代表取締役であったI及びはとタクシーグループの副会長であったJと面接したところ、Iは、Hに対し、本件土地の売買代金は三四〇〇万円であると申し立て、売買代金を三四〇〇万円とし、売買代金の一部(手付金)として買主は三〇〇万円を売主に支払うこと、売主から買主に対する本件土地の引渡及び所有権移転登記手続は二週間以内に行い、登記申請完了後二週間以内に買主は売主に対し売買代金を支払うことなどを内容とする平成元年六月二八日付土地売買契約書の写(乙九)を提出した。なお、その際、Iらは、Hに対し、本件物件の売買に係る契約書は右土地売買契約書のみであり、売買代金の授受は終了しているので、訴外会社は控訴人に対して債権を有していないと申し立てた。

(四) 他方、訴外会社は、大分県別府県税事務所長から本件処分を受けた後も、納税の督促に対し、国税に対する不服を申し立てており、その結果待ちであることを理由に納税しなかった。その後、大分県別府県税事務所納税課納税第二係長Gが調査したところ、訴外会社は、営業を停止しており、本件物件その他の財産を既にすべて他に譲渡していた。そこで、Gは、第二次納税義務を課すべき者の有無を調査するため、平成元年一二月一一日及び同月二二日に、訴外会社の会社事務所を訪ねて、Jと面会したところ、同月二二日、Jから、本件物件を四〇〇〇万円程度(本件建物は一〇〇万円)で売却し、受領した代金は社員の退職金等に充てたとの説明を受けた。

(五) Gは、平成二年一月二五日、訴外会社の会社事務所で、Iと面会し、同人から本件土地売買の契約書として、H同様、売買価額三四〇〇万円の土地売買契約書の提示を受けると共に、売買価額一〇〇万円の建物売買契約書の提示も受けた。また、Iから、右売買代金額について、路線価より単価が多少安くなっており、代金の授受及び所有権移転登記手続が終了しているとの説明を受けた。

右1の認定事実によれば、本件物件の売買代金額は、三五〇〇万円であると認めるのが相当である。

3  なお、この点に関し、原審証人Iの証言中には、本件譲渡の価額は、五〇〇〇万円であったが、価額が三四〇〇万円と記載された土地売買契約書(乙九の原本と同様のもの。)及び一〇〇万円と記載された建物売買契約書(乙一〇の原本と同様のもの。)は、大分県別府県税事務所の職員が度々来訪するということがあり、平成二年三月に本件譲渡の残代金一五〇〇万円が入金される予定になっていたことから、右入金を隠蔽し、訴外会社の事業の終了に伴う様々な支払に充てる資金として確保するために、本件譲渡代金のうち既払分(三五〇〇万円)を譲渡代金とする契約書を、平成二年一月中旬ころにIが控訴人に無断で作成したもので、右各契約書中の控訴人名下の印影は、Iが事情を知らない控訴人の妻から控訴人の印章を借り出し、これを押捺したものである旨の部分があり、原審における控訴人本人尋問の結果中には、控訴人も右各契約書の作成には何ら関与していないとして、控訴人名下の印影が控訴人の意思に基づくものであることを否認し、右各契約書は架空の内容のものである旨の部分がある。

しかし、右I及び控訴人の各供述は、前記1で認定した事実(Iは、平成元年八月の時点で、大分税務署の担当職員の要請に応じて、価額が三四〇〇万円と記載された土地売買契約書の写しを提示した。)に照らし、いずれも採用できない。

4  さらに、訴外会社は、本件譲渡の価額は五〇〇〇万円である旨主張して、同額の譲渡代金が記載された売買契約書(甲一)を提出し、原審証人I及び同Fの証言中には、訴外会社が本件物件の時価の鑑定をAに依頼し、その鑑定評価額を参考に本件譲渡の価額を五〇〇〇万円と決定したものであり、右代金については、平成元年六月二八日に三〇〇万円、同年七月一七日に三二〇〇万円、平成二年三月二三日に一五〇〇万円がそれぞれ銀行口座に振込入金されているとする部分がある。しかし、右各証言部分は、前記1で認定した路線価を参考にして譲渡代金を決めた趣旨と解されるIのGに対する前記弁明と矛盾する上、原審証人Aの証言によれば、訴外会社は、Aに対して本件物件の鑑定を依頼し、鑑定結果を口頭で聞いた後、その八か月後に鑑定書の作成を依頼し、その間、鑑定料の支払もしていないというのであって、右鑑定経過自体不自然であることからすると、本件譲渡の価額を決定するに当たってAの評価額を参考にしたとの点については重大な疑問があるといわなければならない。また、売買代金の入金についても、平成二年三月二三日、訴外会社代表取締役I名義の普通預金口座に一五〇〇万円の現金が入金されている(甲八の1・2)ものの、これは、前記のとおり、大分税務署や大分県別府県税事務所により、本件物件の売買代金額が不当に低額ではないかとの疑問がもたれ、その調査が開始された後に入金されたものであり、入金直後に、その大半が訴外会社の役員報酬や平成はとタクシーへの借入金の返済、訴外会社代表者用の高級車の購入費等に支出されており(甲八の1・2、原審証人I)、訴外会社及び平成はとタクシーがグループ企業であり、控訴人自身平成はとタクシーの代表者であったこともあり、両者の役員らには親族関係等密接な関係が存在する(乙一の1ないし3、二)ことからすると、右入金は、本件物件の売買代金額を五〇〇〇万円と仮装するための偽装工作の一環にすぎないというべきである。

三  本件物件の本件譲渡時の時価について(争点3)

1  証拠(甲五、乙一二、二三、二六、原審証人C)及び弁論の全趣旨によれば、以下の各事実が認められる。

本件物件は、JR大分駅の南西約一・五キロメートル(直線距離)、大分交通バス「西の台入口」停留所(本件物件譲渡当時には存在しなかったが、近い将来に開設が見込まれていた)から東方約一五〇メートル(徒歩約二分)のところに位置し、近隣地域は、戸建住宅と低層アバートの混在する住宅地域で、農地も多少残り、標準的使用は二〇〇平方メートル程度の敷地をもつ木造低層戸建住宅である。本件物件の所在する地域は市街化区域・第二種住居専用地域であり、建ぺい率六〇パーセント、容積率二〇〇パーセントである。本件物件の南西に大分自動車道のインターチェンジの建設が予定され、その「アクセス道路」として本件物件の南方に道路が開通する予定であり、西方にも右道路と接続する市道が開通する予定であった。

一  土地は南西側が幅員四メートルの舗装道路に接し、幅約一八メートル(ただし、間口は約二八メートル)、奥行約五三メートルの長方形に近い不整形の区画であって、公簿上の面積(九五八平方メートル)を有する。また、市道から本件土地に至る道路は途中狭くなったり、曲がったりしてはいるが、本件物件はタクシー会社の営業所兼駐車場として使用されているのであり、自動車の通行等に特段の支障はない。

二  土地は右道路を挟んで一土地に接し、北東側が幅員四メートルの右舗装道路及び南東側が幅員四メートルの舗装私道に接面する角地で、間口約一六メートルの概ね長方形状の区画であって、公簿上の面積(一六七・七四平方メートル)を有し、三土地は共有土地(持分四分の一)で、二土地南東側の舗装私道として利用されており、公簿上の面積(二二二平方メートル)を有し、四及び五建物は昭和四六、七年に一土地上に建築された建物である。

右認定事実及び証拠(当審証人E、当審鑑定)によれば、本件物件の周辺地域は大分駅裏の既成住宅地に所在し、職住接近などによりアパート・マンション用地として優位な立地条件にあるが、本件物件の近隣地域は駅裏市街地の外縁部に所在し、やや接近条件で劣るため、一戸建住宅を主体としており、また、近隣周辺におけるマンション建設は、平成四年ころから徐々に増加したものであり、アパート・マンション建設は、旧農家の遊休地利用の目的で行われている傾向があることなどから、当該地域においては一般性に欠け、本件物件譲渡がなされた時点における近隣地域の標準的使用は、一般住宅の敷地であるというべきである。

2 本件物件の時価評価については、前記のとおり、A鑑定・B鑑定・C鑑定・D鑑定・E鑑定(価格時点はいずれも平成元年六月ないし七月)が存在し、いずれも使用借権が存在しないことを前提として、それぞれ本件物件の時価を五一四四万円、六一一一万九〇〇〇円、八一八一万一〇〇〇円、九〇七六万六〇〇〇円、七八九八万九〇〇〇円と鑑定している。鑑定手法は、前四者はいずれも取引事例比較法と収益還元法を用いており、E鑑定は、一三例の比準事例に基づく取引事例比較法を用いているところ、鑑定手法自体特に問題とすべき事情はないが、最有効使用の見方と、個別要因の認識とそれによる減価率についてかなりのばらつきがあり、その結果、右のように相当大きな開差が生じている。以下、各鑑定について検討する。

(一)  A鑑定(甲三)及びB鑑定(甲四)について

A鑑定及びB鑑定は、一土地の評価額を算定するにあたって考慮する個別的要因として、一土地を二〇〇平方メートル程度の分譲地として、分割して使用することを想定し、分割により発生する潰れ地(取付道路)や造成費を考慮して、大幅に単価を減じ、他の減価要因を勘案したうえで、一土地の時価を、A鑑定では、標準地価格の五八・六パーセント、B鑑定では、同じく六八・四パーセントとしており、その結果、一土地の評価額が、A鑑定は三八七三万五〇〇〇円、B鑑定は四七八三万四〇〇〇円となり、最有効使用について同様の見解をとっているE鑑定が袋地・不正形・造成減価を総合して標準値価格の七九パーセントとしているのとも開差があるが、他の鑑定結果と比較して大幅に低額となっている。

そして、その原因は、A鑑定及びB鑑定は、戸建住宅開発の場合の減価率算定にあたって、本件土地の形状が字図どおりであることを前提としているところ、前記のとおり、本件土地の現状の形状は、字図にみられるような大きなくびれ部分はなく、土地の現況に照らして、右減価率はいずれも過大であること、A鑑定は、採用した取引事例の価格修正をするにあたって、住宅地域を商業地域と見たことにより過剰に減価していること、B鑑定では、収益還元法における純収益を他の鑑定とかけ離れた低値に設定しているなどの問題点があり、A鑑定及びB鑑定の評価額はいずれも採用できない。

(二)  D鑑定(乙二六)について

D鑑定は、その手法自体に格別問題とすべき点はみられないが、選択した取引事例がC鑑定やE鑑定に比較してやや高額であること、価格修正率が右両鑑定と比較してやや少ない傾向があると、一土地の最有効利用を中層建物の敷地としている点で前記認定と抵触すること、最有効利用を右のように判定した結果、潰れ地や造成による減価を考慮せず、個別要因としては接道条件と奥行長大のみをみて、標準地価格の九〇パーセントと評価した結果、他の鑑定価格と比較して突出した評価となっており、本件建物の評価も他の鑑定と比較して二倍以上も高額であり、その相当性に多少の疑問を呈さざるを得ず、全面的には採用できない。

(三)  C鑑定(乙一二)について

C鑑定は、簡易鑑定として実施されたものであり、近隣地域の範囲や標準的画地についての記載が欠如していること、取引事例比較法で使用した事例が三例と少ないこと、右三例の個々の減価要因等についても記載がないこと、一土地の最有効の用途として中・低層の共同住宅用地としている点で前記認定と抵触することに難点はあるが、収益還元法を適用し、地価調査基準地価格からの規準をも行って調整した結果、本件物件の属する地域の標準価格を七万八〇〇〇円(一平方メートル当たり)と査定し、一土地については、個別要因(奥行逓減として五パーセント減)を斟酌して修正したうえ、さらに建付減価(五パーセント減)を考慮して得た額に、地積を乗じて得た額(六七四三万八〇〇〇円)をその時価とし、二土地については、角地として二パーセント増の補正を加えて地積を乗じた一三三四万五〇〇〇円を、三土地については、私道減価として九五パーセントを減じて地積を乗じた二一万六〇〇〇円を、それぞれの時価とし、また、四及び五建物については、原価法(間接法)により再調達原価を求め、この価格に耐用年数による原価・観察減価法(中古建物による市場性の減価を含む)等の修正を行って得た額に、床面積を乗じて得た額(四建物につき八一万二〇〇〇円、五建物は無価値)を右価格時点における時価と評価し、その結果、本件物件の評価額を、合計八一八一万一〇〇〇円と鑑定しており、前記諸事情の把握、さらに、評価額の算出過程やその手法において、それ自体、特に不合理・不都合な点は見あたらず、基本的に相当であるというべきである。

(四)  E鑑定について

E鑑定は、本件物件の周辺地域について詳細な分析を行い、五地域から一三事例を選択し、個別要因に基づく標準化補正を行った上で、地価公示価格等から基準した価格との均衡にも配慮して、近隣地域の標準価格を七万五三〇〇円(一平方メートル当たり)と査定し、一土地については、最有効用途を戸建住宅分譲としつつ、中低層建物の敷地として一体利用できる期待性を加味し、前者とした場合の袋地・不正形による補正を九四パーセント、造成減価による補正を八四パーセント(補正率計七九パーセント)とした上で、右の期待性として一六パーセント強を加えて(総合補正率九五・五パーセント)、評価額を七万一九〇〇円とし、地積を乗じて六八八八万円と評価している。二土地については、C鑑定と同率の角地加算を行って、一二八八万二〇〇〇円と評価し、三土地については、私道減価を九〇パーセントみて、四一万八〇〇〇円としている。また、五建物については、再調達現価を一平方メートル当たり七万円とみて、残価率五パーセント、観察減価五〇パーセントとして、時価を二五万三〇〇〇円と評価している。

同鑑定は、概ね妥当な判定をしているものと認められるが、一土地の用途として、戸建住宅分譲用地と評価しながら、中低層建物用地として一体として利用できる期待性を加味しているが、最有効利用を判定しつつも、将来性をみてより有効利用の可能性が現実的であれば、その期待性を考慮することは必ずしも背理とはいえないが、E鑑定人の証言によれば、中低層建物用地としての利用が目論めるのは平成四年ころからであるというのであり、本件物件の譲渡から四年も先のことである。そうすると、その間、戸建住宅分譲用地としての利用ができなくなり、投下資本に対する金利負担などの問題も生じるから、このような不確実な期待が地価形成要因として大きく働くとは考えがたいところであり、期待性に対し一六パーセント強もの補正をするのは過大というべきである。

(五)  以上の検討を総合して、取引事例比較法による比準価格は、E鑑定(七万五三〇〇円/平方メートル)とC鑑定(七万八〇〇〇円/平方メートル)の平均値(七万六六五〇円/平方メートル)を、収益還元法による価格は、C鑑定(七万六二〇〇円/平方メートル)とD鑑定(七万三二〇〇円/平方メートル)の平均値(七万四七〇〇円/平方メートル)を採用し、不動産市場の動向を反映して実証性の高い比準価格を重視して、二対一の加重平均値である七万六〇〇〇円/平方メートルをもって、近隣地域の標準価格とする。

一  土地については、C鑑定・D鑑定・E鑑定をそれぞれ斟酌して、奥行低減・不整形減価・造成減価・建付減価を考慮し、標準価格の八五パーセントの六一八八万六八〇〇円(一〇〇円未満四捨五入、以下同じ)を相当額と認める。

二  土地については、C鑑定・D鑑定・E鑑定が一致して二パーセントの角地加算を行っているから、これに従って、一三〇〇万三二〇〇円とする。

三  土地については、道路敷兼共有地減価として、C鑑定が五パーセント、D鑑定とE鑑定が各一〇パーセントと評価していることを参考し、標準価格の八パーセントとし、三三万七四〇〇円と評価する。

四  建物については、C鑑定に従い八一万二〇〇〇円、五建物については、E鑑定に従い二五万三〇〇〇円と評価する。

3 使用借権について

証拠(乙八ないし一〇、二一の1・2、原審証人I)及び弁論の全趣旨によれば、本件物件は、もと控訴人が所有し、同社のタクシー事業の営業所兼駐車場として使用されていたこと、控訴人とKとは、新たにKが設立代表者となって設立する平成はとタクシーに、控訴人のタクシー事業や資産を全部譲渡することにし、平成元年三月一四日、控訴人と平成はとタクシーは、控訴人の事業全部を平成はとタクシーへ譲渡し、タクシー事業の譲渡譲受の認可の日をもって右譲渡譲受の効力発生日とする旨の譲渡譲受契約を締結したこと、右契約締結にあたっては、平成はとタクシーは、控訴人から譲り受けたタクシー事業の営業所兼駐車場として本件物件を使用することが前提とされていたが、平成はとタクシーに本件物件を購入する資力がなかったため、代表者であったKが本件物件を購入することになったこと、平成はとタクシーの設立登記は平成元年四月四日付でなされ、同年六月二八日付で本件物件譲渡がなされ、同年七月四日付で右譲渡譲受の認可がなされたこと、本件物件は、右認可の日の前後を通じて、タクシー事業の営業所兼駐車場として現実の使用が継続されていることが認められる。

以上によれば、本件物件譲渡においては、平成はとタクシーが本件物件をタクシー事業の営業所兼駐車場として使用することが予定されていたものであり、Kと平成はとタクシー(当時の代表者はK)との間で、タクシー事業の譲渡譲受の認可を条件とする本件物件の使用貸借契約が暗黙裡に成立し、同年七月四日付で認可がなされたことにより、同日をもって本件不動産について平成はとタクシーの有する使用借権の効力が発生したというべきである。

4 E鑑定によれば、右使用借権としては、本件土地(三土地を除く)の価格から一五パーセントを減価すべきであるから、本件物件の時価は、一土地が五二六〇万三八〇〇円、二土地が一一〇五万二七〇〇円、三土地が三三万七四〇〇円、四建物が八一万二〇〇〇円、五建物が二五万三〇〇〇円となり、その総額は、六五〇五万八九〇〇円となる。

四  本件譲渡の低額譲渡性について(争点4)

1  そこで、本件譲渡が地方税法一一条の八にいう「著しく低い額の対価による譲渡」に該当するかどうかについて判断する。

同条に規定する第二次納税義務の制度は、形式的には第三者に財産が帰属しているものの、実質的には、なお、滞納者にその財産が帰属していると認めても公平を失しないような場合には、その形式的権利の帰属を否定しながら、しかも、私法秩序を乱すことを避けつつ、形式的財産が帰属している第三者に対し、補充的に滞納者の納税義務を負担させることによって租税徴収の確保を図る制度である。したがって、ここにいう「著しく低い額」に該当するか否かは、当該財産の種類、数量の多寡、時価と対価の差額の大小等を総合して、当該取引価額が通常の取引額、すなわち時価に比して、社会通念上著しく低いと認められるか否かにより、判断すべきものと解するのが相当である。

そして、上場株式、社債等のように、一般に時価が明確な財産については、価額の差(時価と対価との差)が比較的僅少であっても、「著しく低い」と判断すべき場合があるのに対し、不動産のように値幅のある財産については価額の差がある程度開いても直ちには「著しく低い」とはいえない場合があるが、少なくとも時価のおおむね二分の一に満たない場合は、特段の事情のない限り、「著しく低い」ということができるというべきである。したがって、右のおおむね二分の一とは、二分の一を境に低額譲渡と否とを峻別する趣旨ではなく、二分の一前後のある程度幅をもった概念である。

ところで、前記のとおり、本件譲渡の価格は三五〇〇万円であり、時価は六五〇五万八九〇〇円であるから、控訴人は、本件物件を、時価のほぼ二分の一(五三・八パーセント)に当たる対価で買い受けたのであり、本件譲渡時が平成元年であり、不動産価格が上昇気運にあったことも勘案すれば、本件譲渡は、社会通念上「著しく低い額」による譲渡であるということができる。

2  そして、被控訴人が、訴外会社に対し、前記更正にかかる法人県民税等につき、滞納処分を執行しても、なお、その徴収すべき額に不足すると認められること、本件譲渡が訴外会社の右法人県民税等の更正処分の指定納期限の一年前の日以後に行われたこと、右徴収不足は、訴外会社が、控訴人に対し、本件物件を前記のとおり譲渡したことに起因するものであること、本件物件の譲受人である控訴人が、譲渡人である訴外会社の株式の五〇パーセント以上を保有するFの長男であることによれば、控訴人は、本件譲渡により受けた利益の限度において、右法人県民税等の第二次納税義務を負うというべきである。本件において、控訴人は、時価六五〇五万八九〇〇円の物件を売買代金三五〇〇万円で買い受けたのであるから、この差額から不動産取得税等一四五万四八五〇円を控除した少なくとも二八六〇万四〇五〇円が控訴人が本件譲渡により受けた利益であると認められる。

五  課税手続の違法性について(争点5)

控訴人は、被控訴人は、① 控訴人に対する事実確認を怠り、② 課税の前提である本件物件の時価の判定について、慎重な判断を怠り、③ 本件処分の告知書自体を控訴人の住所宛に送達しておらず、本件課税手続は極めて杜撰であり、憲法三一条に違反し、無効であると主張する。しかしながら、第二次納税義務者に対する納付告知は、実質的には主たる納税義務者に対する徴収処分の一段階であり、地方税法は、右納付告知を行うにつき第二次納税義務者から事情聴取したり、弁明の機会を与えることを予定していないから、本件処分を行うにつき、控訴人に対して、右のような手続が行われていなかったことをもって、処分の瑕疵ということはできない。また、証拠(乙一二、原審証人G)及び弁論の全趣旨によれば、IやJからの事情聴取により本件譲渡が「低額譲渡」に当たることを疑ったGは、平成二年二月ころ本件物件の時価の鑑定をC不動産鑑定士に依頼したところ、同月一五日に、同人から、右時価が八一八一万一〇〇〇円である旨の回答を得たので、地方税法一一条の八が定める用件を調査、検討の上、控訴人が本件譲渡により、少なくとも四五三五万六一五〇円の利益を受けていると判断して、被控訴人において、本件処分を行ったことが認められるのであり、被控訴人において、不十分又は恣意的な調査を行った形跡はない。そして、本件処分の納付通知書が控訴人に到達したことは当事者間に争いがない。

よって、本件処分手続に違法は存在しない。

六  結論

以上によれば、本件処分は納税限度額につき二八六〇万四〇五〇円を超える部分についてのみ違法があるので、原判決を変更し、右違法部分を取消し、控訴人のその余の請求は、いずれも理由がないので棄却する。

(裁判長裁判官 井垣敏生 裁判官 白石史子 裁判官 高橋亮介)

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